再生可能エネルギーの導入支援は、二段構えで組み立てられてきました。普及の乏しい初期には、発電した電気を固定価格で買い取るFIT制度で投資回収を保証し、導入を一気に立ち上げます。普及が進んだ後は、市場で売ることを前提に支援を薄くし、電源としての自立を促します。その転換点に置かれたのがFIP制度であり、以降は国民負担の抑制・電力市場への統合・自立化という三つの力が、買取価格と支援の対象を年々つくり変えてきました。本ページでは、FITからFIPへ、そして支援の重点化に至る流れを、制度がどの課題に応えて変わってきたのかという視点から、時系列で整理します。
最終更新 2026-11 / 出典は各項目のリンク先(資源エネルギー庁・経産省審議会 等)
普及の段階に応じて、支援のかたちが「立ち上げ → 市場統合 → 絞り込み」と変わってきました。
固定価格から市場連動のプレミアムへ、という流れは日本に固有のものではありません。FIP(フィードインプレミアム)はドイツなど欧州が先に取り入れた仕組みで、再エネが十分に普及した国から順に、固定買取を市場統合型へと移してきました。日本のFIP制度も、再エネを自立した電源へ育てるという国際的な潮流を踏まえた段階的措置として設計されています。出典: 資源エネルギー庁「エネこれ」FIP解説
2012年7月、再エネ特措法に基づき固定価格買取制度(FIT)が始まりました。これは、再エネでつくった電気を、国が定めた価格で一定期間(事業用太陽光は原則20年)買い取ることを電力会社に義務づける仕組みです。買取価格は、調達価格等算定委員会の意見を尊重して経済産業大臣が毎年度設定します。
初年度の買取価格は住宅用(10kW未満)42円/kWh、事業用(2,000kW以上)40円/kWhと高い水準に置かれました。いつ発電しても同じ価格で売れる——市場の変動から切り離して投資回収を確実にすることで、まだ根づいていなかった再エネ、とりわけ太陽光の導入を一気に後押しする狙いです。
再エネ特措法に基づき、再エネ電気を国が定めた価格・期間で買い取る固定価格買取制度が始動。2009年に始まった太陽光の余剰買取を、全電源・全量買取へ広げた本格制度。住宅用42円/kWh、事業用40円/kWh(2,000kW以上)など高水準で立ち上げた。
固定・長期・全量買取のもとで再エネ導入量が短期間で大きく増加。一方、高い買取価格の権利だけを押さえる動きなど、制度の副作用も現れ始めた。
急拡大の裏で、認定だけ取得して建設に至らない未稼働案件が大量に滞留しました。高い初期の買取価格の権利を押さえたまま、機材コストが下がってから建設すれば、その差額はそのまま国民負担に上乗せされます。
2016年5月に改正FIT法が成立し、翌2017年4月に施行されました。認定の単位を、設備だけを対象とする設備認定から、電力会社との接続契約を前提とする事業計画認定へと改め、期限までに接続契約を結べない案件のFIT認定は原則として失効させます。運転開始期限(事業用太陽光は原則3年)も設けられました。この見直しだけで、約1,700万kWの事業用太陽光の認定が失効しています。
あわせて、価格を競争で決める入札制が、2017年度にまず大規模太陽光(当初2,000kW以上)へ導入されました。
認定の単位を事業計画認定へ変更し、接続契約を前提化。運転開始期限を導入し、既認定案件も要件を満たさなければ失効する仕組みとした。
改正法で約1,700万kWが失効した後も事業用太陽光の未稼働が大量に残るとして、買取価格の見直し(減額)などの対応を整理した。
代表的な区分の買取価格(円/kWh)。制度開始時の高水準から、市場・コスト低下に合わせて大きく下がってきた。
| 年度 | 住宅用(10kW未満) | 事業用・地上設置(代表) | メモ |
|---|---|---|---|
| 2012 | 42.0 | 40.0(2,000kW以上) | 制度開始。高水準で立ち上げ |
| 2016 | 31.0 | 24.0 | 改正FIT法の前年 |
| 2025上期 | 15.0 | 10.0(10〜50kW)/8.9(50kW以上・入札対象外) | 市場・コスト低下で大きく低下 |
| 2026 | 初期投資支援(24.0→8.3) | 9.9(10〜50kW)/9.6(50kW以上) | 屋根は初期投資支援へ |
| 2027 – | 初期投資支援(屋根) | 支援対象外(地上設置) | 支援を屋根・地域共生へ重点化 |
読み取り:住宅用は2012年度の42.0円から2025年度上期の15.0円まで下がり、2025年度下半期以降は階段型の初期投資支援(住宅用24.0円〈〜4年〉→8.3円、事業用屋根19.0円〈〜5年〉→8.3円)に移行しました。さらに事業用の地上設置は2027年度以降、FIT/FIP支援の対象外となります。買取価格は、薄く広く配るのではなく、残すべき区分へ絞る方向で見直されてきました。出典: 経産省 2026年度以降の買取価格等(2026年3月)
FITのもとでは、いつ発電しても同じ価格で買い取られるため、事業者が需給バランスを意識する動機はありませんでした。再エネを主力電源へ育てるには、火力など他の電源と同じく市場価格を見ながら発電する自立した電源へと移していく必要があります。膨らみ続ける賦課金をどう抑えるかも、避けて通れない課題でした。
2020年6月、エネルギー供給強靱化法(改正再エネ特措法)でFIP制度の導入が決まり、2022年4月に開始しました。FIPでは固定買取ではなく、市場で売った価格にプレミアム(補助額)を上乗せします。プレミアムは基準価格−参照価格で決まり、基準価格は当初FIT調達価格と同水準で期間中固定、参照価格は市場価格に連動して月ごとに見直されます。
FITでは免除されていたバランシング(計画値と実績値を一致させる義務)の費用も事業者負担となり、経過措置として太陽光・風力は2022年度に1.0円/kWhのバランシングコストが交付され、以降逓減します。一定規模以上は新規認定でFIPのみ、50kW以上は希望でFIPを選択・移行でき、以後はFITとFIPが併存します。
エネルギー供給強靱化法(改正再エネ特措法)で、再エネを電力市場へ統合する段階的措置としてFIP制度の導入が決まった。
市場売電価格にプレミアム(基準価格−参照価格)を上乗せする仕組みが始動。参照価格は卸電力市場・非化石価値に連動し月次更新。太陽光・風力のバランシングコストは2022年度1.0円/kWhの経過措置から逓減。
国民負担。再エネの買取費用の一部は、再エネ賦課金として電気料金に上乗せされます。単価は2012年度の約0.22円/kWhから上昇を続け、賦課金の総額は2021年度に約2.7兆円へ達しました。2023年度は燃料高で市場価格が急騰し、買取費用から差し引く回避可能費用が増えた結果、単価は一時1.40円まで下がります。それでも2026年度は4.18円/kWh(1か月400kWhのモデルで月額1,672円)、買取費用等は約4兆8,507億円にのぼります。
系統制約と出力制御。太陽光の急増で、供給が需要を上回る時間帯に発電を一時止める出力制御が広がりました。2018年に九州で初めて実施されて以降、ほかのエリアにも拡大し、2022年度は全国で約6億kWh。その後もさらに増えています。
2018年に離島以外で初めて九州で実施。その後ほかのエリアに拡大し、2022年度は全国で約6億kWh。再エネの系統統合が新たな課題に。
400kWhモデルで月額1,672円・年額20,064円。2026年度の買取費用等は約4兆8,507億円、回避可能費用等は約1兆6,495億円と見込む。
再エネ、とりわけ太陽光は十分に普及し、コストも下がりました。制度の焦点は、導入量をひたすら積み増す段階から、自立化と、地域に受け入れられる質の高い導入へと移っています。
屋根設置太陽光の導入を加速するため、2025年度下半期から初期投資支援スキームを導入。適用期間を前半(高価格)と後半(低価格)に分ける階段型で、財務基盤の小さい建物所有者でも早期に投資を回収できるようにしました(住宅用24円〈〜4年〉→8.3円、事業用屋根19円〈〜5年〉→8.3円)。
一方、事業用太陽光(地上設置)は2027年度以降、FIT/FIP制度の支援対象外に。支援は屋根設置など地域共生が図られた形へ重点化されます。FIPの入札・認定対象も段階的に拡大し(2026年度の入札対象はFIP認定対象のうち250kW以上、上限9.6円)、FITからFIPへの移行が進みます。
屋根設置太陽光の加速に向け、階段型の価格設定を採用。2025年度下半期から適用を開始した。
事業用太陽光(地上設置)は2027年度以降、FIT/FIP制度の支援対象外とする方針を明示。入札対象はFIP認定対象のうち250kW以上(上限9.6円)とした。
屋根設置など地域との共生が図られた形での導入を促進する観点から、支援の重点化の対象・あり方を審議会で整理。